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日本の地域メッシュ統計の番号振り付け方を是正する

Date: 2023

はじめに

1989年明治維新から始める現代国家日本は、世界有数の比較的完全な統計データを所持している国のだが、まだ完璧とは言えず、むしろ欠陥がありふれづつも国として正常に動作しているのが不思議である。本論文は、1973年(昭和48年)に策定された地域メッシュSOUM1|SOUM2の問題点を指摘し、改善を要求するのを目的とする。

地理学では古来、形式地域と実質地域の議論がある。例えば、行政上の区画は必ずしも現実を反映しているわけではない。実際の物理的障壁がない限り、人が移動し、物が流通するOECD1:p113。統計データでは、国レベルで取るも、集計するのは行政単位で行われるため、都道府県市町村のデータとしてまとめられがちである。したがって、行政の管轄範囲をまたがるような社会経済事情を、このようなデータから見いだせることが難しい。精密な分析に資するために、そこで大きさが均一の物理的範囲で統計データを集計する必要がある。この役割を果たしたのが、「地域メッシュ統計」である。

しかし、果たして本当に「役割を果たした」かどうか、筆者は判断を保留する。これまでた くさんの有識者に、地域メッシュ統計の不正確な点が指摘され、例えば実際の面積が均一でないといったこと、本論文で繰り返し強調するまでもないITOA1|KOIK1|KOIK2|SOUM1|SOUM2。ただ一点だけ、直ちに過ちを是正可能な点を、筆者はここで指摘したい。

地域メッシュ統計の仕組み

地域メッシュ統計は、日本国土を様々な基準(文字通り)で切り分け、番号を振り付けている。大雑把な分け方から、1次区画、2次、3次、4次、5次まで細かく分けている。1次はおおよそ80km四方で、5次(4分の1地域)はおおよそ250m四方になる。この「おおよそ」が、これまでの有識者みんなが指摘している点であるが、本論文ではここに着目しない。本節はあくまで概要で、詳細はやはりSOUM1|SOUM2に参照すべきである。

1次区画は、緯度40分(縦)と経度1度(横)に沿って日本国土を細分割しているのである。例えば東京23区では実際に緯度35経度139のにあるが、1次区画でできたメッシュによると、縦53と横39の場所にある。それを(縦,横)の数字のペアで表現し、つまり東京23区では5339という番号が振り与えられている。

2次区画はさらに8等分にする。メッシュ番号は縦と横がそれぞれ0から7まで数える。

3次区画はさらに10等分にする。メッシュ番号は縦と横がそれぞれ0から9まで数える。

2次と3次は図1のように付ける。

図1 2次と3次区画の図示
1
2
3
4
5
6
7
8
 n |  .  .  . n3  .  .
...|  .  .  .  .  .  .
 3 |  .  .  .  .  . 3n
 2 |  .  .  .  .  .  .
 1 | 10 11 12  .  .  .
 0 | 00 01 02  .  .  .
   |__________________
      0  1  2  3 ... n

4次区画はさらに2等分にする。

5次区画は同じようにさらに2等分にする。

4次と5次区画のメッシュ番号は図2のように付ける。

図2 4次と5次区画の図示
1
2
3
 3  4
 1  2
10進数 

番号の付け方に問題点1

2次と3次区画は0から数えるという計算科学の慣習で、縦が先で横が後という同じく計算科学の慣習に準じるデカルト座標を使用している。しかし、4次と5次はいきなりこれまでに慣習を破れ、独走している。

図3 4次と5次区画の図示、10進数で表現する
1
2
3
 3  4 
 1  2 
10進数 

なぜなら、2次と3次区画を2x2に限定したら、図4aのようになるからである。さらにこれを10進数に戻すと、図4bなる。

図4a 2次と3次区画の最初の2x2の部分は2進数にも見える/図4b 2次と3次区画の最初の2x2の部分を10進数で表現する
1
2
3
10 11 ->  2  3
00 01     0  1
 2進数    10進数

図4bと図3の差は1である。つまりは、現在の付け方(図3)は、本来であるべき姿(図4a)に1が足された状態になっている。さらにこの状態のまま、(縦,横)の数字のペアとして表現すべき所を10進数で表現しているのである。

この基準不一致のデメリットは、プログラムで処理する際に複雑な式を書けないといけないことであるSOUM1:p13。また、番号から実際の位置を読み取るのも困難になる。

解決策

まとめると、現在すでに問題が起こっているのと、問題が起こりそうなのが存在している。しかし解決策はいかにも簡単である。

1.2次と3次区画を正しく(縦,横)の数字のペアで番号を付与する。したら図4aになる。具体的には、現在を番号に1を引いて2進数にしたら、正しくなる。

この提案にはメリットしかないことがプログラマであればすぐにわかる。まずすべてのレベルにおいて番号の振り付け方が統一されること。縦横縦横縦横縦横縦横なので、計算効率が増加する。

さらに、縦と横をそれぞれ纏めて(縦縦縦,横横横)のペアにすれば、、レベルをまたがって一枚の2次元行列に地理情報をそのまま表示できる。これはそもそも数字の桁と同じような考え方で、つまり(123,210)のようなペアは、百桁に縦1と横2で、十桁に縦2と横1で、一桁に縦3と横0なのである。これを縦横縦横として再構築すれば、122130になり、メッシュ番号との互換性を持つ。精度がいらない時は単純に四捨五入で4次や5次の番号を捨てればよい。この提案に対して、従来の4次と5次区画では1桁しかないため、縦横として分割できず、新提案のようなに便利な変換が一切できない仕様になっているのが分かるのであろう。

まとめ

地域メッシュ統計は、実質地域の社会経済事象を統計で把握するポテンシャルはあるが、未だに解決しない問題点が存在している。その一つとして、レベルによって番号を付けるルールが同じではないことと、将来を考えず周到ではなかったことである。解決策は単純に番号を直すだけで簡単なのである。

文献

ITOA1

伊藤彰彦 (1976) 地域メッシュ統計の紹介

KOIK1

小池司朗 (2010) 小地域統計データの利用と今後の課題

KOIK2

小池司朗 (2011) 地域メッシュ統計の区画変遷に伴う時系列分析の可能性に関する一考察

OECD1

OECD/SWAC (2020), Africa's Urbanisation Dynamics 2020: Africapolis, Mapping a New Urban Geography, West African Studies, OECD Publishing

SOUM1

総務省統計局 第1章 地域メッシュ統計の特質・沿革 (2023-04-29閲覧)

SOUM2

総務省統計局 第2章 総務省統計局における地域メッシュ統計の作成 (2023-04-29閲覧)


Last update: 2023-06-28
Created: 2023-06-28